はじめに

このブログのタイトル「システム管理者と恋愛の避けられない関係」について、最初に説明させていただきます。このブログは決して、システム管理者をやっているとモテてモテて仕方なくて恋愛せずには居られない、と言うことについて書いたものではありません。また、システム管理者は仕事柄、深夜勤務も多いから、そんな夜に同僚の女子社員と恋に落ちてしまうことが多い、と言うことを書いたものでもありません。そういう路線を期待していた方々には申しわけないのですが。

 

ではなぜ「システム管理者と恋愛の避けられない関係」などと言う思わせぶりなタイトルをつけたのか。
私はシステム管理者という仕事を20年以上やって来ました。社会人になってから数年の間はプログラマー、SEの仕事をやり、その後、徐々にシステムを作る側の人間からシステムを動かす側の人間へと変身して行きました。ちょうどその「変身」をしている最中に世の中の景気はガクンと下がり、正社員で雇ってもらえることが難しくなり、派遣社員として働くようになりました。派遣社員はひとつの仕事が終われば、また別の職場へ派遣されます。ひとつの職場で長期間落ち着いて働くと言うことが出来ません。旧知の先輩や後輩が居ません。基本的に1人で、あるいは同じシステム運用管理チームにメンバーが居たとしても他社からの派遣社員と協力しながら、日々の業務を遂行しなければなりません。もちろん、派遣先のお客様(大概は派遣先の会社のシステム管理部署ですね)、システムを利用するエンドユーザー、システムを開発した業者、ハードが故障した時に修理をする業者、などとも関わりながら仕事をします。システムを運用管理する人間として、これら自分をとりまく環境と上手く付き合いながら、システムを円滑に稼働させなければならないのです。

 

システム管理者になったばかりの頃は、社会人としての経験が浅かったということもあり、上手く行かないことがたくさんありました。同じシステム運用管理チームのメンバーと上手く連携が出来なかったり、お客様と意見が衝突することが多かったり。技術的にも未熟で、今から思えば作成する文書も拙いものだったと思います。それでも、数年が経つ内に、コンピュータの技術に関する事や社会人としてのノウハウについてはそれなりに身につき、日常の業務で頭をかかえるようなことが少しずつ少なくなって行きました。ただ、何年経っても、変わらずに難しいことがあります。それは、先に書いたような自分をとりまく環境(お客様、エンドユーザー、運用管理チームのメンバー等)と上手く付き合って行く、と言うことです。


仕事と言うのは良い時ばかりではありません。トラブルが続いたり、お客様の機嫌が悪かったりでやりにくい時もあります。その状況を、角を立てずに上手く立ち回り、業務を遂行する。これが難しいんです。システム管理者として外部から派遣され、お客様の会社に常駐して働く場合は特に難しいです。居候みたいなものですから。この「立ち回り」が上手く行かずに悩み、辞めて行った人も数多く見て来ました。

 

幸い、私はこの「立ち回り」を半ば強制的に身につけて行く事が出来ました。それは、若い時期から派遣社員として働いて来た事が大きな要因となっています。つまり、すぐに気軽に相談できる同じ会社の先輩や同期が傍に居ない、という状況で働いていたので、「こういう場合は、あの人に相談してみよう」とか「これは予めあの部署に話を通してないとトラブルになるな」と言うような感覚が自然と身について行ったんです。派遣社員として現場に居ることで、どの組織の派閥にも属していなかったため、周囲の環境を客観的に把握することが出来るようになっていたんですね。システムを作る側の人間からシステムを動かす側の人間へと変身したこと、景気が悪くなって派遣社員になったこと。すべては巡り合わせです。人生、何がどうなるか分からない。もし、こういう巡り合わせがなかったら、今ほど上手く立ち回れるようになっていなかったと思います。そうしたら、果たしてこんなに長くシステム管理者の仕事を続けていられたかどうか。ともあれ、システム管理者としての「立ち回り」を習得して行ったおかげで、何とか歩いて来られました。

 

ある日、システムを監視する端末が並んでいる運用管理室にひとりで居た時、突然、こんな考えが浮かびました。

 

「システムを管理するということは恋人と上手くつきあうのに似ているな」

 

ソフトとハードだけではなく、いろんな人々と上手く関わりながら、立ち回って行かなければいけない。角を立てず、お互いがハッピーになれるように気を遣って。その感覚が、自分の恋人に対しての気遣いに似ているなと思ったんです。システム管理者に最も求められるのは、人に対する細やかな気配りではないか。そこで、さらに思いました。今までに得たこの「立ち回り」に関するあれこれを書き残しておこうと。
世の中には、最新のテクノロジーについての解説書はたくさん出ています。しかし、システム管理者としてどのように立ち居振る舞えばよいか、という立ち回りに関する本は、ほぼ皆無と言っても良いでしょう。だったら、私が書いてみようと思いました。システム管理者が行うべきである、まるで恋人に対する気遣いのような「立ち回り」について。そこで、このブログのタイトルを「システム管理者と恋愛の避けられない関係」と名付けたわけです。

 

と言うわけで、最新の情報処理技術に関するノウハウについては既に世の中にたくさんの書物が出回っているのでそちらを参考にしてください。これから私が書いて行くのは、システム管理者として、どのように考え行動するべきか、どういう心構えで居なければならないか、と言うことについてです。システム運用管理者として頑張るみなさんが、より良い「システムとユーザーのパイプ役」になるために少しでもお役に立てれば幸いです。